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不換紙幣本位体制(インコンパーチブル・ノート・スタンダード・マネー・オーダー)のあらゆる欠点は徐々に露わになっている。
にもかかわらず、ドルの影響力の世界的な維持はこれまでかなりの成功を収めてきたと言える。
この結果としての現状は、アメリカ一国にとってはきわめて有益であったように見える。
そのために諸外国は大きな迷惑を蒙った。
この不換紙幣の世界通貨システムに組み込まれたことで、あちこちにひどい歪みが残された。
案の定、ワシントンの議会政治家たちと大統領府(ホワイトハウス)は無力である。
彼らはこの事態を只憂慮するばかりで、世界規模で行われている八百長取引から生まれる、米ドルの真の価値をめぐる「粉飾決算」が原因でこれからも何度となく突発する問題を解決することはできない。
現在の世界通貨体制に内在する欠陥を理解し、解決しようとする努力が全く為されて来なかった。
ただひたすら、保護貿易主義(プロテクショニズム)による外国産品への「ダンピング輸入の可能性がある」という嫌疑をかけての、該当国への懲罰関税の導入と、為替の固定相場を特定の国との関係でだけ政治的に合意するという外交政策と、アメリカに逆らう国に対しての、脅しによる屈服を促す意味をもつ政治的動機にもとづく各種の制裁と、特定の業種の企業ヘの政府補助金による救済と、管理貿易の不公平で部分的な推進と、それでも駄目な場合の特定の輸入品目への国内の価格統制を行ってきた。
一方で政策金利(FFレート)をこまめに動かすことで景気の変動への政策関与とし、賃金の上昇や下落への細かな統制を行い、しまいには、政府自らが超国粋主義的感情を鼓舞したり、国民を戦争に扇動したりすることで、ならず者国家を特定してこれらの国々に軍事的圧力をかけ、計画的に戦争という手段に訴えた。
全て深刻な欠陥貨幣システムを守り持続させようとしているからだ。
そのひずみが実体経済のシステムにまで及んで来ることで露呈するさまざまな矛盾点を、人為的に隠蔽するためである。
目先の短期では、ドルという不換の準備通貨の発行者であるアメリカは、巨大な経済的利益を常に手に入れることができた。
ドルは曲がりなりにも、第二次大戦後の世界で50年以上にわたって、世界的な信用を勝ち得てきた。
それもそろそろ限界である。
金や銀などの実物資産(タンジブル・アセット)による裏づけ(コラテラル性)をもたない法定の不換紙幣(フィーアット・マネー、ペーパーマネー)は、長期的には世界中の人々の信用を失い、現在の「世界通貨」を発行している通貨覇権国家にとっての脅威を引き起こす。
以前その信用を段損したのはイギリス帝国であった。
今回はアメリカの番なのである。
諸外国は実物財と引き替えに、文句も言わないで、米国ドル紙幣を受け取り続けた。
この状態が続く限りは、アメリカは抜きん出た存在であり続ける。
アメリカの今の議員の多くは現状のやり方が米国にとって計り知れないほどの大きな利益であることを理解していない。
彼らは、今は、はげしく中国の対米貿易黒字の方を批判している。
以前は日本からの輸入ラッシュがあり、日本の対米貿易黒字を非難していた。
「ゲームの一人勝ちは許されない。
勝者はテーブルに勝ち金の一部を置いてゆけ」というわけである。
貿易黒字の大きな国に対して、懲罰的な政策を課すことは、アメリカの国内産業への特別な保護になり、結局、競争力のない産業を温存することになる。
また、「産業の空洞化」で、国内企業が、メキシコはじめ南米諸国や、アジア、欧州に工場を移転することで、国内の雇用が海外に製造業が移転することに繋がった。
アメリカは、あらゆる業種において自力で生産する能力を減退させ、諸外国に製品の製造を依存することで、農業を除くほとんどの産業部門で、自給の生産を持続できなくなっている。
諸外国はそれぞれの国が持つ民族特性に応じての、その高い貯蓄率によって、米ドルをたくさん蓄積している。
それに対してアメリカ国民の貯蓄率は、長年にわたって、決まって0%である。
お金があれば、使ってしまうか、あるいは、リスクを伴う投資にまわしてしまうからである。
諸外国は、寛大にも自国で蓄えたドル建ての資金を、政府機能と、IMF世界銀行の機能を通して、アメリカに還流させ、きわめて低い金利でアメリカに貸し戻して、それでアメリカ国民の過剰消費のための資金調達を助けて、寛大に資金供給してくれているのである。
この過程には、アメリカ政府による、相当に強引な各国の政府や通貨当局への圧力が働いていることが、あちこちで判明してきている。
こういう話は、アメリカ国民であれば、もう聞き飽きたと感じている。
現実は容赦なく襲い掛かってくる。
米ドルがその真実の減価(価値の下落)によって、諸外国には従来ほどは歓迎されなくなってきている。
つい最近も、中国の副首相が、言い放ったそうである。
「私たち中国人がせっせと貯め込んだ、おたくのドルでは、ろくなものが買えなくなっているではないか」と。
だから、そのうちドルでの支払いを拒絶する国が現れて、1971年のニクソン・ショックの時と同じように、「世界銀行の制度によれば、今でも政府間の決済は、金で行う、という取り決めになっているから、これらのドルを、今すぐ、金にかえてくれ」といい出すなら、再び、アメリカ政府は、「金とドルとの党換の停止」を発表せざるを得なくなるだろう。
再びそういうことが起きる時期が迫っているのである。
きっかけに、世界の通貨・貿易の決済体制は、全く新しい時代に突入して、全く新しい世界試合(ワールド・ゲーム)が開始されるだろう。
今度は、1971年の後の収拾策のような、「ドルを金ではなく、石油で裏打ちする」という手法は使えない。
それではどうするか。
金を中心にして、その他の鉱物資源も担保に差し出し、さらには、石油、天然ガスなどのエネルギーから、農産物(穀物)に至るまでの、すべての実物資産(タンジブル・アセット)を、まとめてバスケット(かご)の中にいれて、信用の源泉にする、全く新しい通貨体制を作るということだ。
この新通貨体制に移行しなければ済まない。
ヨモディティ・バスケット通貨体制」と呼ばれるものである。
「コモディティ」とは、「基本物資」という意味であり、貴金属と鉱物資源を中心とする戦略的な物資のすべてであり、日本の商品先物市場(工業品取引所)や、農産物・穀物取引市場で扱われている基本商品のすべてである。
この「コモディティ・バスケット」に、やがて起きるドル崩落のあと、世界は移行してゆくのである。
これ以外の方策や、新制度のアイデアを持っている人間は、今のところ誰もいないからである。
そのときには、戦後の長年にわたって不労の利益を享受してきたアメリカ国民は、「収入以上の生活、生産高以上の生活」を送ったつけを、支払わなければならなくなる。
米ドルに対する諸外国の心証の変化は既に始まっている。
最悪の事態はこれから訪れるのである。
5年続いた「修正IMF体制」はもうもたないニクソン・ショックで起きた、「金・ドル体制」の動揺を収めるために、翌年の1972年に、米国がOPEC(石油輸出国機構)と密かに結んだ、「石油価格はかならずドル建てとする」という合意は、米ドルにずば抜けて大きな準備通貨としての人工的な力を与えた。
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